日記「花ひらく人生」
2008年09月05日
小林秀雄『考えるヒント』
14日、日曜日は「中秋の名月」。
午後5時半頃が月の出だそうです。
この名月、実は満月にはまだ少し足りず
天文上は翌日が真ん丸お月様ということです。
この季節の月を「名月」と愛でるようになったのは、
ちょうど見上げるのに適した空の低い位置に上り、
また、晴れ空が多いことからだそうです。
先日、小林秀雄『考えるヒント』を読み直していましたら
「お月見」という文章に出会いました。
若い会社員たちが集まった酒宴がたまたま十五夜の夜であった。
月見などには全く無関心なはずの彼らが、誰ともなく山に目をやり、
山の端に月が上がると、その場の空気がまったく違うものとなり
皆が月に吸い寄せられるように、お月見の風情を楽しんだ。
しかしそこに同席したスイス人たちは、なぜ、一座の雰囲気が一変したか、
いっこうに理解できず、ただ怪訝な顔をしていた。
そんなエピソードに続いて、小林秀雄はこう書いています。
『意識的なものの考え方が変わっても、
意識できぬものの感じ方は容易には変わらない』
『新しい考え方を学べば、古い考えは侮蔑できる、
古い感じ方を侮蔑すれば、新しい感じ方が得られる、
それは無理なことだ、感傷的な考えだ、とやっとはっきり合点できた。
何の事はない、私たちに、自分たちの感受性の質を変える自由はないのは、
皮膚の色を変える自由がないのとよく似たところがあると合点するのに、
随分手間がかかった事になる。妙な事だ』
文化とは身体の奥深くに刻まれ、遺伝子のように受け継がれていくもの。
思考や意図を越えた、もっと神聖な領域に根ざすものだと感じられます。
ちょうど香園が生まれた頃に書かれた文章でありますが
読むたびに新しい気づきを与えてくれる、貴重な1冊です。